きのこ所感 

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私は、福井県でも京都府北部に接する嶺南地方の山間部(旧)名田庄村に生まれ、学生時代の一時期を除いては現在までずっとこの場所に住んでいる。かつては山の尾根はアカマツ林でマツタケは発生場所さえ知っていれば小学生でも普通にとれて、学校の帰りにランドセルを置いてマツタケを取りに山に寄り道して帰り、夕食のおかずを取ってきたにも関わらず母によく怒られた記憶がある。

そんな環境に育ったせいか、きのこといえば、マツタケのみでほかのきのこは大人でもすべて「どくきのこ」と呼んで、足蹴にされていたように思う。もちろん優秀な食菌も豊富にあったのだろうが、食用はマツタケで十分であったのだろう。

学生生活を都会で過ごし、田舎に帰ってからも秋になるとマツタケを取りに山によく入り、他人の知らない自分だけの「シロ」も数か所発見した。しかし数年後にはこの地方にも「マツクイムシ」と呼ばれる松の材線虫病が侵入し、現在ではアカマツ林は標高の高い一部の山を除いてほぼ壊滅状態となってしまっている。

私が野生きのこに興味を持ち始めたのは、皮肉にもそんな時期からで、秋のマツタケ以外にもいろいろなきのこがあるのだとあらためて認識し、当時はまだ「食べられるか、毒か?」に終始していたように思うが、それでも福井きのこ会に入会してからは地元で取れるきのこの名前も少しづつではあるが判るようになった。

現在でも、きのこと言えば秋のマツタケという環境にあるこの地域で、真夏にきのこが多く発生するのを知っている人は地元では少ないように思う。職業がら(土木建設業)山に入ることもよくあり、近年真夏の暑い時期に見つけた数種を紹介したいと思う。

1.ムラサキヤマドリタケ・ヤマドリタケモドキ (イグチ科)

平成25年8月 福井県おおい町の大島半島に落石防護柵の工事を行った時に見つけたきのこ。大島半島は若狭湾の小浜湾を形成する西の半島のひとつで標高200m~300mの峰から成り立っておりスダジイを中心とした常緑の広葉高木林である。

県道から少し入った南東向きの斜面で風通し良く、木漏れ日が程よくあるような場所。

お目当てのきのこは同じイグチ科のヤマドリタケモドキであったのだが、落ち葉の中から最初にみつけたのは、カサが黄色地に紫模様のあるタイプのムラサキヤマドリタケで周辺にポツリポツリと頭を出している。気温はすでに30℃は優に超えているが、採取して眺めてみると虫食いもなく、濃い紫色網目模様のはっきりした美しい個体であった。

少し離れた場所では、これもまた網目模様のはっきり表れたお目当てのヤマドリタケモドキを採取して、食卓に持ち帰った。

きのこの料理は私の担当である。ヤマドリタケ系のきのこはオリーブオイルを使った料理がおいしい。たっぷりのオリーブオイルでソテーして味付けは塩コショウのみ、

軽めの赤ワインと合わせて家族そろって最高の夕食をいただいた。

平成25年8月 ヤマドリタケモドキ

2.アカヤマドリ

平成25年8月 福井県おおい町名田庄 混成雑木林で採取したきのこ。

林道を車で走っていると、大きなきのこが目についた。直感でアカヤマドリと分かった。大きな個体のすぐ隣には、かわいい幼菌。今まで老菌しかお目にかかっていなかったので、幼菌を発見し喜びもひとしお。ボリュームたっぷりなので持ち帰りも数本で十分である。

個人的には食べてもおいしいと思うのだが、家族は黄色の汁が不気味といいあまり食べてないようだ。

平成25年8月 アカヤマドリ

3.キヌガサタケ[アカダマキヌガサタケ] (スッポンタケ科)

平成24年7月 福井県小浜市 モウソウ竹林

時期的には梅雨の真っただ中、と言ってもこの年はゲリラ豪雨があってもしとしとと降る雨の期間は短かったように思う。

弟が変わったきのこを見つけたと言ってもってきた。形状からしてシラタマタケかスッポンタケだろうと思い、卵型の断面を調べてみることにした。ナイフで切ってみると

やっぱりスッポンタケ!と思いきやよくよく見るとクレバになるべき部分からもう一層別の層が中心を包み込むように見える。もしやと思い採取場所を聞いてみると、アユ釣りの帰りに川沿いの竹やぶの中で見つけたといった。これはもうキヌガサタケの可能性が大であると確信。さっそくその竹林に案内してもらった。

竹の落ち葉の中から卵状の薄い紫いろの幼菌を数個見つけた。卵状の部分の上部が少しひび割れているようにも思うが、はじめて見るきのこなので、卵状の袋がいつ裂けるのか見当もつかない。図鑑で早朝の短時間の内に成長することを知っていたので、毎朝、出勤前に見に行くことにした。1日目 変化なし、2日目 袋上部のひびわれが目立つようになり、形も卵型から若干山型に変化したように思えた。3日目マント付きの成菌を発見。すでに倒れていて、残念ながら出てくる瞬間には立ち会えなかった。

さらに2日後の朝にはついにマントを伸ばした新しい状態のものを見ることができた。

 近くでよく見ると、匂いに誘われてかクモがクレバにまとわりつきコバエが周辺を飛び回る様子が確認できた。図鑑に書いてある悪臭とはどんなものか自ら体験しようと覚悟を決めて鼻を近づけてみる。んっ?悪臭???この匂い個人的には割と好きかも!腐ったリンゴのような匂いである。疑問を残しつつ、その数日後も2,3の子実体を確認し、写真におさめることができた。

 後日、インターネットでキヌガサタケを検索していると、幼菌が赤みがかっている

アカダマキヌガサタケの存在を知った。特徴としては幼菌が赤みを帯びているほかに

クレバの悪臭があまりしないこと、マントが地面まで届かず短いこと。関西地方にやや多く発生する。などがかかれていて、観察した個体はそのすべての特徴をそなえていることからアカダマキヌガサタケで間違いないと私なりに納得している。

原稿 yoshinobu fujihara

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